「徳川秀忠」小和田哲男

誰々を徳川家康になぞらえ、誰々を徳川秀忠になぞらえて、こうあるべきなんだというような議論をするつもりはない。
親子関係、先輩後輩など、誰もが徳川家康であり、また誰もが徳川秀忠になり得る。
こうした観点に立って、この本を読んでみると、色々と気がつくことが多い。
1 家康も秀忠も、それぞれチームで行動していると考えるべきだ。
歴史の本では、家康が〇〇したと描かれるが、それはチーム家康が〇〇したと言うことだ。
2 家康も秀忠もチームとしてできる事は何でもやっているということだ。
家康の立場からは、いつになっても後継者のために色々と配慮を続けている。
家康のブレーンを秀忠のブレーンにする場合も、犬猿の仲の関係の者達をつけている。ここにも配慮はある。
家康も秀忠も、多くのブレーンがあり、そのブレーンをうまく利用して行動していると思う。
3 こうした家康と秀忠の最後の接点でのやりとりは参考になる。
家康も、いよいよ最後のときが近づいたことを観念したものか、枕元の秀忠に、「わしが死んだら、天下はどうなると思うか」と聞いている。それに対し、秀忠は、「天下は乱れると思われます」と答えているのである。家康はこの答えに満足したらしく、「ざっと済たり」と一言いって、心地よげだったという。この「ざっと済たり」という言葉は「そう考えていたらよい」といった意味だったものと思われる(148頁)。
秀忠の言葉は、覚悟を示したものだろう。


投稿者名 前川弘美 投稿日時 2022年05月09日 | Permalink