契約書類の作成

契約書がない?

 未回収の売掛金・貸付金等が存在する場合に,「その債権が本当に存在するのか?」と言う点で争いになります。この問題は,債権証書(契約書,発注書・請書,支払約束証書等)が存在していれば,すぐに証明可能です。
 ところが,中小企業の多くが,こうした債権証書に不備があったり,そもそも作成していないケースが散見されます。まずは,しっかりとした契約書類を残すことが,予防策のはじめの一歩です。

契約書類の不備に要注意

 契約書を作成するに際して,債務者・債権者のパワーバランスによっては,不利な条項を含む契約書を受け入れざるを得ないことがあります。危機時期におけるリスク(約定解除・期限の利益喪失条項・相殺適状条項・損害賠償予約等)は,優越的な地位を有する大企業側に有利になりがちで,契約書の内容如何によっては,中小企業の債権回収が困難になることもしばしばあります。
 一方で,独占禁止法・下請法等によって弱い立場の企業が保護される場面もあります。契約書を締結する場合に,しっかりとリーガルチェックを受けることを怠らないようにしたいものです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月20日 | Permalink

手形払いに関する新通達

 政府は,いわゆる骨太の方針で,下請法等の運用強化,ガイドラインの充実・普及による適正取引推進を掲げ,経済産業省もいわゆる「世耕プラン」を打ち出して,①価格決定方法の適正化,②コスト負担の適正化,③支払条件の改善を課題としています。
 このうち,支払条件に関して,法律上,支払方法は特に定めなければ流通通貨によりますが,実際には預金振込の方法がとられます。もっとも,当事者が合意すれば代物弁済が可能です。直ぐに原資工面を要しない約束手形(振出人が後で現金化されることを約束した有価証券。現金化までの期間(支払サイト)が長ければ長いほど,支払われなくなる可能性が高くなる。)による代物弁済も,これまでは業界慣行・先例として実施されていた常況も多いでしょう。
 従前は下請法の規制を受けると,通常は,下請事業者が現実的に報酬を受け取る利益を潜脱しないように,支払サイトが120日以内(繊維業は90日以内)とする通達運用がされていました。

現金払いの原則化

 今回,新しい通達により,「下請代金の支払いは,できる限り現金によるものとする。」と記載されました。
 この「できる限り」とは,通達改訂の趣旨に鑑みると,親事業者側からは原則として現金払いを提案すべきとなり,下請事業者の同意があって初めて現金払いに準じた預金振込もしくは現金化までに時間・負担のある手形での代物弁済が可能になるとの意味合いで解するべきでしょう。
 また,従前から当事者の同意を経て手形払いにしてきた取引についても,親事業者側は現金払いへの転換打診をすべきと言うことにもなるでしょう。

割引コストの考慮

 新通達では,手形等の代物弁済に際しては,現金化コストについて下請事業者の負担にならないよう,「下請代金の額を・・・十分協議して決定すること。」と記載されました。
 例えば,手形は,支払サイト満了前に現金化するためには,銀行等で割引(一定額を控除の上で現金化)してもらうことが必要です。そうすると,本来的には商品納品時から60日以内に現金が受け取れるはずの下請保護規制が,実質的に潜脱されてしまうことになります。そこで,割引手数料相当額を報酬額に加算する等の打診が親事業者側に求められることになるでしょう。

支払サイトの短縮

 従前の支払サイト規制を当然としつつ,段階的短縮と最終目標として支払サイト60日以内とするように努力義務が課されました。
 この点は,実務上,大きな影響を及ぼす部分であり,当初の改正予定では一気に短縮する予定であったものを,諸事情考慮して努力義務にしたと推察されます。したがって,将来的には支払サイト60日以内が遵守事項に格上げされる可能性が高いでしょう。
 派生的に,建設業における支払方法についても,手形サイトは120日以内にするよう通達で規制されています。こちらの方も,下請法の新通達を受けて,変更される可能性があり,注意深く見守る必要があります。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月25日 | Permalink

下請法の歴史と趣旨

 下請法は,個人が平常生活していく際には,取り立てて問題視する必要がない法律です。しかしながら,企業間取引においては,親事業者からすればコンプライアンス上は看過できない問題であり,下請事業者からすれば熟知して親事業者との交渉に生かすべき法律です。
 ニッチな法律を理解するポイントは,①制定の歴史,②制定の趣旨・目的を把握することになります。

下請法の歴史

 下請法の制定日は,昭和31年6月1日です。高度経済成長の初期であり,企業が目覚ましく発展している時代です。もっとも,強い立場にある親事業者側が,人・金・物の面で弱い下請事業者に無理をさせることがあっては,産業全体の活性化は成しえません。
 本来であれば,そうした適正取引に向けた是正は,公平な市場形成の一環として独禁法で規制(いわゆる優越的地位濫用規制)がされており,その活用が望まれるところです。しかしながら,同規制は要件が規範的であるが故に認定が難しく,迅速な対応ができない構造でした。そこで,下請事業者の経済成長を阻害しないよう,簡易迅速に処罰すること(半面として処罰範囲を明確にする)を狙って,下請法は制定されました。
 制定当時は,現在のように,メールもなければFAXもない時代です。ですから,下請法上の対処も,昭和31年の世代をベースに考えられているものが多いことになります。例えば,交付義務のある注文書は,現在ではFAXやEDIを使うことも多いはずですが,この法律では原則的に注文書の原本交付(郵送又は手渡し)として定められ,通達等によって例外的に下請事業者の了解が得ていれば電磁的方法によることもできるとされています。

下請法の趣旨・目的

 この法律は,下請事業者の利益保護が目的になります。しかし,あらゆる利益が保護範囲内なのかといえば,そうではありません。
 保護されている利益は,経済的利益(要するに報酬)です。下請法の要件を満たすと,親事業者には4つの遵守事項と11個の禁止事項が課されることになりますが,いずれも下請事業者が適正な報酬を貰うために欠かせない要素であるからこそ,定められているものです。
 建設業法上でも,下請保護規制が記載されていますが,これについても下請人の保護利益は主として経済的利益であり,規制態様も下請法と通じる部分が殆どです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月25日 | Permalink

清算的財産分与の対象(総論)

 夫婦の財産を法的観点から分類すると,以下の3種類に分けることができます。
 ①婚姻前から各自が所有していた又は婚姻中に親から相続した財産など「名実ともに単独所有の財産」=『特有財産
 ②夫婦が婚姻中に資金を出し合って購入し,登記も共有名義とした不動産など「名実ともに共有の財産」=『共有財産
 ③夫婦が婚姻中に協力して取得した住宅や共同生活の基金とされる預金債権など「名義は一方に属するが実質的には共有の財産」=『実質的共有財産
 まずは,これらのうち,どれが清算的財産分与の対象となるのか,検討していきましょう。

共有状態の解消と言う観点

 財産分与請求権は,婚姻中に形成した財産の分割を求める形成権であり,そのような形成を求める実益は,共有物分割請求や遺産分割請求と同様に,対象財産が共有状態にあることからの解消を求める点にあります。
 そのため,対象財産は,共有財産となります。特有財産は,財産分与の対象外となります。

夫婦別産制との関係

 民法762条1項は,「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」と「婚姻中に自己の名で得た財産」は,特有財産であると定めています。他方で,同条第2項で「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」は共有財産であると法律上推定されます。
 「婚姻中に自己の名で得た財産」については,夫婦間の体内関係においては,単に名義が夫婦の一方に属するというだけでは該当せず,単独所有であると証明できた財産,すなわち他方配偶者の寄与が全く存在しない財産であると証明できる物に限定解釈されています。
 そのため,実質的共有財産についても,財産分与の対象に原則として含まれることになり,例外的に単独所有であると証明できた場合には例外的に対象外となります


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月14日 | Permalink

財産分与請求権の法的性質

 離婚紛争が増加する中で,離婚時に婚姻期間中に形成した財産の分割を求める手段として財産分与という制度が存在することは,広く周知されてきています。今回は,財産分与請求権(民法767条1項)について,少し掘り下げて見てみましょう。

 財産分与請求権の権利性

 財産分与請求権は,「離婚をした」当事者が請求できるものであり,一般的には離婚請求と同時期に行使されます。
 財産分与請求権は,権利行使可能期間が“離婚成立時から2年”に制限されていますが(民法768条2項但書),当事者の協議成立又は審判・調停があるまでは,具体的な内容が金銭請求なのか,特定不動産の引渡請求や登記手続請求なのか,つまるところ範囲及び内容が不確定・不明確な形成権です。
 不確定・不明確な段階では,たとえ当事者の一方が無資力状態であっても,債権者が債権者代位権によって代わって行使することはできないと考えられています。

財産分与請求権の内容

 財産分与請求権の構成要素には,①婚姻期間中に形成した財産の清算的要素,②離婚後扶養の要素,③離婚自体慰謝料の要素,以上3つが存在しており,個別に具体的分与額を算出します。
 優先順位は①と③が先行し,②については,①及び③だけでは生計維持が困難である場合にのみ認められます(補充性)。
 ③については,財産分与で考慮された場合,別途離婚自体慰謝料を請求できないのかという疑問点が生じます。この点については,判例にて財産分与での斟酌で精神的苦痛が全て慰藉された場合には別途請求することはできないが,財産分与での斟酌だけでは不足している場合には別個に慰謝料請求を実施しても良いとされています。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年01月14日 | Permalink