取引開始段階こそ調査

 新しい取引先と継続的契約関係に入る前に,しっかりと相手方の素性調査をしましょう。事前の調査こそ,転ばぬ先の杖になります。

連絡先情報

 会社の基本的事項は,商業登記事項証明書にて把握することができます。一般的には,会社に対する連絡は,当該証明書記載の会社本店所在地又は代表者住所所在地となります。
 ところが,住所表記については,地番以降の部屋番号等まで判明しないと,郵便物等が届かなくなってしまうことも少なくありません。代表者住所地については,時には住民票・戸籍附表まで取寄せて,連絡先確定をする必要があるでしょう。

財務調査

 計算書類等や勘定科目内訳書を事前に拝見すれば,大体の会社経理状況は見えてくるところです。この他にも,会社の状況に併せて,より細かな資料も参照すべきです。
●上場会社…会社四季報,有価証券報告書
●非上場会社…取引先,取引先銀行

現場百篇

 形式だけ整えていようとも,現地に赴くと全く実体の伴っていない幽霊会社はあちこちに存在しています。施設を保有している取引先であれば,現地見学をして,働いている社員の様子,会社の什器備品類の状況,業務の過多をしっかりと把握すべきです。
 取引先の流通経路まで見当が付けば,信用にたる会社か否か,自ずと見えてくるものです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月28日 | Permalink

債務者の信用情報調査

無い袖は振れない

 『無い袖は振れない(手元不如意)』という状況が,債権回収にとって一番不味い状況になります。相手方に返済能力があることを確認することは,取引の開始前に債権者が成すべき必須の行動です。
 債務者に任意に見せて貰えるのであれば,貸借対照表・損益計算書,勘定科目内訳書を拝見した上で,取引を開始することが肝要です。

財産の強制開示は難しい

 強制的に財産状況を開示することは,対象財産を特定した場合に,弁護士照会制度,裁判所の調査嘱託制度等を利用して可能です。しかしながら,対象財産の所在をある程度特定する必要があり,危機時期には回答を得るまでの間に財産隠しに遭う可能性も少なくありません。
 その意味でも事前の信用情報調査は,予防策の中核的要素と言っても過言ではないでしょう。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月20日 | Permalink

契約書類の作成

契約書がない?

 未回収の売掛金・貸付金等が存在する場合に,「その債権が本当に存在するのか?」と言う点で争いになります。この問題は,債権証書(契約書,発注書・請書,支払約束証書等)が存在していれば,すぐに証明可能です。
 ところが,中小企業の多くが,こうした債権証書に不備があったり,そもそも作成していないケースが散見されます。まずは,しっかりとした契約書類を残すことが,予防策のはじめの一歩です。

契約書類の不備に要注意

 契約書を作成するに際して,債務者・債権者のパワーバランスによっては,不利な条項を含む契約書を受け入れざるを得ないことがあります。危機時期におけるリスク(約定解除・期限の利益喪失条項・相殺適状条項・損害賠償予約等)は,優越的な地位を有する大企業側に有利になりがちで,契約書の内容如何によっては,中小企業の債権回収が困難になることもしばしばあります。
 一方で,独占禁止法・下請法等によって弱い立場の企業が保護される場面もあります。契約書を締結する場合に,しっかりとリーガルチェックを受けることを怠らないようにしたいものです。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年02月20日 | Permalink