共和政から帝政へ移行する時期のローマは、国力が真に拡大する時期にあった。

拡大する組織にとっては、いつまでもこの拡大が続くと誰もが考える。
 
しかし、当時のローマの賢人は、そのような国力の拡大期であっても、防衛ラインを決め、防衛ラインの内側をローマ化して統治することを考えた。

防衛ラインを越えて侵攻する場合でも深追いはせず、防衛ラインを堅固にする目的に限定された。
 
当時のローマにおいてすら無限定な勢力の拡張を考えなかったという点は重要である。

組織のためには組織が働く圏域を決めることが必要である。

これは全ての組織は一定のエリアに存在した後にいずれ滅亡する理(ことわり)から明確に導き出されることである。

全ての組織はいずれ滅亡するというのは、組織には必ず時間的、地域的限界があるということである。
 
地域的限界があることは身近に考えてみても明らかである。
 
部屋の中を見回してみると、自分が日常使っている物は別として全てほこりをかぶっていることに気がつく。

1つの部屋ですらこの状態なのだから、他に部屋がある人の場合、他の部屋は一層ほこりをかぶっている。
 
結局、人間は今ほこりをかぶっていない物程度しか十分に使いこなせないのである。
 
いや、もっと多くの物を使いこなせるのだと言い張ってみてもほこりを払わなければ使う気にならないだろう。

すると、ほこりをとるべく掃除をする。掃除をして人生を終わることになる。


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