1 遺言サポート
遺言は、実は、非常に有用な制度です。
遺言があれば紛争は起こらなかったという場合もあります。遺言を書いてみることにより、財産のあり方を考えるきっかけにもなります。
しかし、自分の人生全体を考えることになりますので、同時にいろいろな事柄を調整しなければなりません。相続税を考えなければならない場合もあります。
したがって、弁護士など専門の意見を聞く必要があり、それを総合的に判断する必要もあります。
- 2005年11月25日 15:12
遺言は、実は、非常に有用な制度です。
遺言があれば紛争は起こらなかったという場合もあります。遺言を書いてみることにより、財産のあり方を考えるきっかけにもなります。
しかし、自分の人生全体を考えることになりますので、同時にいろいろな事柄を調整しなければなりません。相続税を考えなければならない場合もあります。
したがって、弁護士など専門の意見を聞く必要があり、それを総合的に判断する必要もあります。
・ 遺族間の争いや、遺産分割による遺族の負担を軽減することができます。
・ 遺言作成にあたり、自分の気持ちや状況を客観的にみることができ、遺言作成後の人生を計画的に過ごすことができます。
・ 法定相続人以外のお世話になった人などにも、遺贈という形で財産を贈与することができます。
ただし、遺言には厳格な要式が定められていますので、法的に不備な遺言は無効になってしまったり、かえって紛争のもとになりかねません。
そのため、遺言の作成にあたっては、弁護士によるチェックやアドバイスを受けることをおすすめします。
さらに、遺言は、要式を満たしていれば自筆でも有効ですが、より正確性を期すため、公正証書による作成が効果的です。
公正証書を作成することにより、要式の不備による無効や、偽造、紛失などの心配が無くなります。
また、公正証書作成後でも、遺言は何度でも取り消し・書き直しが可能です。
今まで遺言では、どの遺産を誰が相続するのかを決めるものの、その相続人がその遺産を思ったとおりに使いこなせるかどうかは、その相続人任せだったといえます。このため、家族がうまくやっていけるかどうかは、相続人次第という、危うさがありました。
ファミリーはどうあるべきかという最重要事項が表現されることはなかったのです。
この点で、今までの遺言の書き方は、改善の余地があると感じます。
「?を相続させる。」という記載は、遺言書としてはよくある形式ですが、このような遺言がされた場合、この遺言が、遺産分割方法の指定をしたものと解釈するか、遺贈と解釈するかについて従来から見解が分かれていました。
しかし、平成3年4月19日判決で、「相続させる」と書かれた遺言書は、遺産分割方法を指定したものである、と解する判断が示され、現在ではこの見解が一般的になっています。
つまり、遺言書は、「?を相続させる」とするのと「?を遺贈する」とするのでは違いが生じることになりますので注意が必要です。
遺言書の記載を「相続させる」とすると、「遺贈する」とした場合に比して次のようなメリットがあります。
・ この遺言書があれば、遺産分割協議や家庭裁判所の審判を経ることなく、指定された相続人が遺産を確定的に取得することができます。
・ 遺産が不動産の場合、指定された者が単独で相続登記できます。
(遺言書が「遺贈する」となっている場合、他の相続人と共同して相続登記をしなければなりません。)
・ 登記の際の登録免許税が安く済みます。
・ 遺産が農地の場合、所有権移転登記の際の許可が不要です。
(遺言書が「遺贈する」となっている場合、許可が必要となりますが、調整区域の農地の場合、許可の取得が難しい場合があります。特に農業振興地域は農業従事者の資格がないと許可が下りません。)
・ 賃借権を相続する場合、賃貸人(所有者)の承諾が不要です。
・ 遺産が債権の場合、対抗要件が不要です。
なお、「相続させる」と書くと良いのは相続人へ遺言する場合です。
「遺贈」とは相続人以外の人へ遺言書で財産を分け与えることを指すので、相続人以外の人に財産を分け与える際に「相続させる」と書いても、それは「遺贈」であり、上記のような効力はありません。
平成23年2月22日最高裁判所第三小法廷判決にて、
「『相続させる』旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生じない。」
という判断がなされました。
すなわち、Aさんが「Bに相続させる」という遺言を作成していても、BさんがAさんより先に亡くなった場合は、その後Aさんが亡くなった際、Bさんの代襲相続人がAさんの遺産を相続することが認められない、ということになります。
「Bさんが先に亡くなった場合は、その後Aさんが遺言書を書き直せばいい」と思われるかもしれませんが、本判例の事案のように遺言者と相続人が相次いで亡くなることや、同時に亡くなるということも十分考えられますので、特定の方に財産を相続させるという遺言書を作成される際は、「BがAと同時あるいはそれ以前に亡くなっていた場合は、Bに相続させるとした遺産を、全てC(Bの代襲相続人)に相続させる」などの予備的条項を記載しておく必要があります。
遺言者が亡くなった後、自筆証書遺言書・秘密証書遺言書を保管又は発見した人は、すみやかに遺言書を家庭裁判所に持参し、検認手続きを行わなければならないことになっています。
この検認手続きとは、偽造・変造を防止し、遺言書の記載を確認する手続きです。
遺言が有効であることを証明するものではないため、遺言の有効性について懸念がある場合は、検認後に有効・無効を争うこともできます。
封印のある遺言書の場合、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封できません。
相続人や代理人の立会いの上で検認を受けると、家庭裁判所において「検認調書」が作成されます。
検認に立ち会わなかった相続人などに対しては、家庭裁判所から検認されたことが通知されます。
なお、検認手続きが必要なのは、自分で作成・保管する自筆証書遺言と秘密証書遺言であり、公証人役場で作成・保管する公正証書遺言は偽造などのおそれがないので、検認手続きは必要とされません。
遺言書を家庭裁判所に提出することをしなかったり、その検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外において開封をした場合、遺言自体は無効になりませんが、このような行為をした人は、5万円以下の過料に処せられます。
また、遺言書を偽造、変造、破棄や隠匿した人は、相続欠格者となります。
遺言者は、特別の理由がなくても、いつでも自由に遺言の全部又は一部を撤回することができます。
また、民法は、遺言がなされた後、一定の事実があったときは、遺言者の真意を問わずに遺言の撤回があったものとみなしています(法定撤回)。たとえば、相続人Aに不動産を相続させるという遺言をしていたが、その後遺言者が当該不動産を第三者Bに贈与したり売却した場合、この部分については遺言を撤回したものとみなされます。
つまり、相続人にとってみれば、遺言者に遺言で約束してもらっても、遺言者の死亡後、必ずしもその時の内容のまま実現するとは限らないということになります。
遺言は、あくまで、遺言者の死亡時(にできるだけ近い時点)の意思を、状況等と照らし合わせた上で実現しようとするものであり、遺言者が死亡するまでその内容は確定しないものであって、いつでも変更されるということを、理解していたほうがよいでしょう。
記録を重視する立場からは、事実であれば正確に残すという考え方はありうるだろう。自分にとって良くないことも、子孫にとって大事な教訓となるのであれば、記録に残すということはあって良いと思う。
しかし、記録として残すということは、残された人たちに対する遺言をするということでもある。遺言書に、うらみ、つらみなどを書いては、書かれた人の心にどこまでも残ってしまうだろう。このようなことが目的となるのは悲しいことであり、してはならないことである。
全ての記録を残すことが重要なのではなく、記録を基に残された人がさらに成長することが重要である。
遺言の検認は、遺言書の偽造や変造が行われることを防止するために、遺言に記載されている内容を確認するための手続きですが、遺言が有効であることを確定する効果はないことに注意する必要があります。
したがって、検認の手続きがなされた後であっても、当該遺言が遺言者以外の者によって偽造されていた可能性などがある場合には、遺言無効確認訴訟を提起することで遺言の有効性を争っていくことができます。その際には、筆跡が遺言者と一致するか否か、遺言内容が遺言者の生前の行動と整合的か否か、遺言を発見した経緯等の様々な事情を考慮して遺言の有効性が判断されることになります。
また、遺言書に「預金を与える」旨の記載があるため、貯金の相続をした相続人が銀行等の金融機関に行っても預金を払い戻そうとした場合、検認の手続きを経ていても、金融機関から払い戻しを断られることがあります。検認が済んでいても、上記のように遺言の有効性を争われることがあるため、金融機関としてはその争いに巻き込まれるリスクを避けているためです。この場合は、法定相続人や受遺者が払い戻しに了解して署名捺印した「相続関係届出書」を金融機関に提出することで、金融機関は払い戻しに応じてくれます。