当事者同士の話し合いやADRでの解決が困難な場合は、裁判手続を利用するほかありません。
 しかし、一般の民事訴訟は仕組みが複雑なため、専門家(弁護士など)に依頼するほかないのが実情ですが、費用対効果や手間の面で躊躇せざるを得ないケースもあるでしょう。
 そのような場合にお薦めできる裁判手続としては少額訴訟があります。少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いの請求を目的とする事件について、原則として1回の審理で判決を言い渡してもらえるという簡易な裁判手続です。
 但し、相手方は通常訴訟への移行を希望できますので、必ず1回で解決できるというわけではありませんから、その点は注意が必要です。


 ADRという言葉は聞きなれないかもしれませんが、要は「裁判外」の紛争解決制度のことです。
 基本的に第三者が間に入って示談のあっ旋や仲裁をしてくれるもので、申立の方法等も裁判よりも簡略化されており、一般の方が利用しやすい点に特徴があります(しかも、手数料無料のところもあります)。 交通事故でよく利用されているADRとしては、
 1.財団法人交通事故紛争処理センター
 2.財団法人日弁連交通事故相談センター
があります(いずれも名古屋市内に窓口があります)。
 弁護士を依頼して裁判まで起こすつもりはないけれども、加害者側の提示する示談金額があまりにも低すぎるので示談のあっ旋を希望される場合などに利用されると良いでしょう。


 事故の当事者同士で話し合いによる解決(示談)ができるのであれば、それに越したことはありません。
 ただし、加害者が任意保険を締結している多くの場合、その保険会社による示談代行がなされることになりますので、実際には「被害者」と「加害者の保険会社」による話し合いという形になります。
 被害者の方から「加害者に誠意が見られない」という苦情を受けることがありますが、このような保険制度の仕組がその原因の一つかと思います。被害者になったときに備えた人身傷害保険や弁護士費用特約をセットした保険契約の売上も増加傾向にあるようですが、「自分の身は自分で守るしかない」という風潮になりつつあるようで、少し寂しい気もします。