商法(運送・海商)の改正(6)被用者の不法行為責任

 運送人の損害賠償責任は、通常、その被用者の行為によって生じる。そして、荷受人・荷受人は、運送人に対する損害賠償請求とともに、当該被用者に対する不法行為責任に基づく損害賠償請求が行われる。
 このように状況のももとでは、改正商法587条により債務不履行責任の制限的規定を運送人に対する不法行為責任に準用しても、結局は、荷送人・荷受人が被用者の不法行為責任を追及し、運送人が被用者からの求償に応じれば、運送人は、責任制限をうけることができなくなってしまう。
 そこで、被用者の不法行為責任も、運送人の責任制限が及ぶことにして、この循環を解消することとした。

新商法588条(運送人の被用者の不法行為責任)
 前条の規定により運送品の滅失等についての運送人の損害賠償責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、む又は軽減さける限度において、その運送品の滅失等についての運送人の被用者の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。
2 前項の規定は、運送人の被用者の故意又は重大な過失によって運送品の滅失等が生じたときは、適用しない。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2018年12月13日 | Permalink