遺産分割協議成立後、遺言書(形式など、法的効力に問題がないことを前提とします)があったことが判明し、その内容が遺産分割協議で決定した内容と異なっていた場合、遺産分割協議と遺言とのどちらが効力を有するかが問題となります。
 遺言は時効により消滅することはなく、法定相続分に優先しますので、協議した内容と異なる遺言が出てきた場合は、遺産分割協議の内容は原則として無効になります(相続人は、「遺言書があることを知らなかったので遺産分割協議をした」と錯誤を主張して、遺産分割協議の無効を主張することができます)。
 ただし、相続人や受遺者(遺言により遺贈を受ける者)『全員』が、遺言と異なる協議の内容に同意する(以前した協議と異なる内容の遺言が見つかったが、協議をやり直さないことに同意する)旨の意思表示をした場合は、遺言を無視して以前の協議内容を採用することが認められます。
 ※ なお、遺言により相続人資格に変更を生じる場合など、特殊なケースについては別に述べます。
 
 上記のような問題を避けるため、遺産分割協議前に遺言書の有無を調査する必要があります。自筆遺言証書の場合は、保管場所が分からないだけでなく遺言書の有無自体も確認が難しいことがあり得ますが、公正証書遺言であれば公証役場で管理されていますので、被相続人の死後、相続人や受遺者などの利害関係人が公証役場で問い合わせれば、公正証書遺言があるか、どこの役場で作成したかを知ることができます。


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