「相続分放棄」は、積極財産を相続しないという意思表示ですが、それによって相続人としての地位は失いません。そのため、相続分の放棄をしても借金などの相続債務を免れることはできません。不動産の登記名義だけを簡易に変更する際に使用する「特別受益証明書」(相続分なきことの証明書)などが相続分放棄の一例です(※「相続分のなきことの証明書」欄参照)。
 この点で「相続分放棄」は、積極財産(プラスの財産)も消極財産(マイナスの財産)も含め、一切の権利義務を相続しないという「相続放棄」とは異なります(※「相続放棄」欄参照)。
 債権者や他の相続人の承諾なくして、放棄者の相続分を移転させる効果を生ずるような相続分の放棄を認めることはできません。
 一方、積極財産のうち個々の相続財産上の共有持分を放棄することはいつでも可能です。
 個々の相続財産について共有持分の放棄がなされた場合は、放棄した相続人の共有持分は、他の相続人にその有する相続分に応じて帰属することになります。 また、個々の積極財産の共有持分の放棄にすぎないため、相続債務の負担は免れません。
相続人が相続分を放棄するという意思を表明した場合であっても、個々の遺産の共有持分の放棄であるか、他の共同相続人に対する相続分の譲渡(※「相続分の譲渡」欄参照)であるかによって違いがあるため、それがどちらに当たるのかを確認する必要があります。


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