製造委託における“指定”

 下請法が予定する取引区分のうち,製造委託(法第2条1項)とは,事業者が他の事業者に物品の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランド(以下,「規格等」と略します。)を指定して製造を委託することを指します。
 なぜ,“指定”されることが要件となっているかといえば,下請事業者は製造した物品を親事業者に納めることで報酬を得られるところ,対象物品の規格等が親事業者の特別なオーダーが存在する場合,それに叶った物品を供給しなければ適正報酬は得られないため,その判断如何について親事業者の優越的地位が存在するからです。

規格品・標準品の購入は?

 製造する物品が,親不業者の指示を受けなくても内容が特定できる統一規格品である場合又は下請事業者がパンフレット等で紹介している標準商品そのものである場合,親事業者から規格等の“指定”が存在しないため,製造委託に該当しなくなる余地があります。
 もっとも,規格品・標準品であったとしても,それに付加して親事業者が下請事業者に加工を希望した場合には,“指定”したと判断される可能性があります。
 例えば,供給先を明確にするためのシールを貼らせたり,親事業者の仕様に沿って幅を切断したりする等,些細な作業を付加しただけでも,“指定”に該当すると考えられています。下請事業者保護の観点から,“指定”の判断は緩やかに解釈されている実情に,注意が必要です。

プライベートブランドの製造委託にはご注意を!

 近時,スーパーや量販店といった大規模小売業者・卸売業者において,製造メーカーに対して特定商品(既製品)を大量発注し,プライベートブランドとして商標を代えて提供することがまま見受けられます。大量発注故に価格も安価ですが,品質も一般商品に負けず劣らずで,消費者のニーズに沿った販売商品と言えるでしょう。
 しかし,このような手法は,規格等を“指定”して製造委託を行う方式であると判断されており,下請法上の所与の規制を受けることを認識しましょう。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年04月15日 | Permalink

下請法に精通しています!

 当事務所では,中小企業支援の一形態として,下請代金支払遅延等防止法(通称「下請法」)に関する専門性を高めています。

 下請法は,独占禁止法の特別法として,簡易迅速に下請事業者の経済的利益(=適正な報酬を得られる利益)を保護することを目的としています。一見すると親しみの無い法律ですが,親事業者に対する行政上の厳しい制約(4つの遵守事項と11の禁止事項)が課せられ,かつ,違反時には厳しい制裁が課されてしまう点で,親事業者のコンプライアンス対策には欠かせない法律の一つです。

講師実績

 中小企業庁主催の下請代金法セミナーについては,弁護士服部真也,弁護士春名潤也,弁護士柴垣直哉の3名が,中部地方(愛知・岐阜・静岡・三重)及び北陸地方(福井・石川・富山)において,平成25年~28年の4年連続で講師を担当しています。
 平成28年度は,活動の場を更に広げ,北は東京,南は大阪・広島・岡山・博多にも講師として足を運んでいます。

相談対応実績

 当事務所が名古屋市を拠点としていることから,自動車産業を中心に,素形材産業,繊維産業の企業からご相談いただくことが多い状況です。
 下請法の分野では,各産業種別ごとにガイドラインを設けていることがあり,固有の違反行為やベストプラクティス手法が例示されています。しかし,行政が求めるベストプラクティスは,理想論であって実務上は採用することが困難な場合も数多く存在します。
 そこで,親事業者の企業に対しては,実務担当者と共に下請法に抵触しない具体的対策を検討しています。また,下請事業者の企業に対しては,親事業者から違反行為を受けていたとしても,報復を怖れて簡単に声を上げられないのが実情です。そのジレンマを如何にして解消するのか,具体的対策を検討しています。
 是非,下請法に関するご相談は,当事務所にご一報ください。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2016年03月10日 | Permalink

経営者保証の担保性

債権者側の目線

 中小企業が金融機関等より事業資金を借り入れる場合,経営者個人を連帯保証人とするのが融資慣行です。貸主側としては,借主が破綻しても,経営者個人に責任追及すれば債権回収が可能と思っているかもしれませんが,保証契約の担保性能は極めて不安定です。例えば,経営者個人の財産を調査すること自体,個人情報保護の観点から多くの障害が存在します。また,経営者個人が破産手続を取られてしまうと,凡そ債権回収は困難になります。単に,保証契約を取り交しただけで安心することなく,融資以前に信用状況の調査をすることが肝要です。

経営者個人側の目線

 中小企業が金融機関等より事業資金を借り入れる場合,経営者個人を連帯保証人とするのが融資慣行です。この融資慣行は,①新規融資を困難にするばかりか,②中小企業の経営者交代にも悪影響を及ぼしています(債権者の承諾なく保証人の地位を移動できないため)。現在,日本商工会議所と全国銀行協会が「経営者保証に関するガイドライン」を公表し,その現状を変えようとしています。
 当事務所所属弁護士が,中小企業基盤整備機構が主催する同ガイドラインのセミナー講師として活躍しておりますので,お気軽にご相談下さい。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2015年08月10日 | Permalink