離婚給付とは、離婚の訴えに付帯して申し立てられる財産分与および離婚の訴えに併合して請求される慰謝料のことです(離婚給付に含まれる三つの要素については、前記「離婚給付について」を参照)。
 離婚給付の清算の対象は、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産です。婚姻中に夫婦が財産を形成しなければ、財産分与は認められません。
 清算の対象とされている財産は、土地・建物・動産・債権などですが、清算の対象から除外されるものとして、以下のものがあります。


1 不動産を婚姻中に取得した場合、その資金源が分析され、親族の援助分や、夫婦の婚姻前から有する財産の出捐分は、清算の対象から除外されます。たとえば、東京地裁昭和56.10.28判決では、不動産の価格から、婚姻前の貯蓄から出捐した分と実家の援助によるローンの返済分とが清算の対象から除かれています。

2 夫または妻が婚姻する前に取得していた財産は、清算の対象ではありません。ただし、夫または妻のそのような財産の維持に、他方が協力した場合、その寄与が評価されることがあります。
  なお、取得の時期は婚姻前であっても、取得のための借入金の返済が婚姻後になされた場合には、財産分与が認められます。

3 夫または妻の相続した親の財産や、贈与された財産は、清算の対象ではありません。

4 夫または妻の婚姻前から有した財産が、婚姻中に売買などにより他の財産に姿を変えても、その財産は清算の対象ではありません。東京地裁昭和61.7.11判決は、夫が婚姻前から有していた土地を売却した代金で購入した土地・建物につき、清算の対象から除外しています。

5 別居の後で取得された財産は、清算の対象ではないという判決があります。東京地裁昭和61.9.26判決は、「清算的財産分与においては、原則として夫婦の協力関係が終了する別居時までの夫婦が婚姻中に協力して取得した財産につき考慮すれば足りると解される」と判示しています(ただし、別居後に完成したが着工は別居前の建物については、清算の対象に加えています)。東京地裁昭和62.3.30判決も、夫が別居後に取得した不動産を清算の対象から除いています。


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