ロックフェラー家の信託

 ロックフェラー回顧録(デイヴィッド・ロックフェラー 1915年生 新潮社 415頁)によると、次の記載がある。

1 ジョン・D・ロックフェラー(著者の父)は、1952年、著者の子供たちが、将来必要とする資金を準備するために撤回不能信託を設立した。

2 著者の父は、1934年、著者とその兄弟たちのために信託を設立しており、著者とその兄弟たちは、その信託から収入のほとんどを得ている。

3 著者の父は、1952年信託の設立前に、信託をどういう構成にしたいか、著者に尋ねた。

4(1)著者とその妻は、子供たち1人1人に適度な年収(開始時の21歳では5000ドル)を受け取らせ、30歳になるまで毎年金額を増やしていくことにした。

 (2)30歳になったら、各自が信託から得られる収入を全額受け取ることにする。

 (3)21歳に達してからは、受託者の承認を受ければ、各自が信託の元本を最大50パーセントまで引き出せる。 

 (4)著者とその妻は、上記の備えと父の寛大さのおかげで、子供たちが、大人になったら独立した人生を歩み、自分自身で最善の資産配分を決定できるようになると、考えた。


 この記載には、興味深い点がある。 

 孫に適度な年収を受け取らせるにあたり、21歳を開始時にしたこと。 

 孫が30歳になったら、全額受け取ることにしたこと。 

 孫が21歳から29歳までは、50パーセントを引き出せるが、受託者の承認を必要としたこと。

 祖父は孫のための信託設立にあたり、父に相談していること。 

 祖父(父母)は、孫(子)に対して、30歳を超えて、その財産管理をしようとしていないのであり、孫(子)が独立した人生を歩み、資産配分も自分自身で決定できるようになることを望んでいることは興味深い。 また、信託の全体が不明なので、不確定であるが、さほど複雑な組み立てにしていないところも面白い。


投稿者名 管理者 投稿日時 2010年07月21日 | Permalink