会社法改正要綱案・各論(1)電子株主総会?

 電子株主総会なんて看板が挙がっていたような気もしますが、結局は、株主総会資料の電子提供の原則化を進めただけで止まっています。
 具体的には、法律上は、まだ、電子提供が原則ではありませんが、定款の相対的記載事項で、電子提供を原則とすることができることになります。「電子提供措置をとる旨の定め」です。この措置の対象となるものは、①株主総会参考書類、②議決権行使書面、③計算書類・事業報告、④連結計算書類。
 しかし、いわゆる上場会社は、この定款を定めなければならず、結局は、法律上、電子提供が原則となる。
 もっとも、インターネットを利用することが困難な株主のために、「書面交付請求権」も、強行法規的に保障している。なお。この書面交付請求は、毎年しなければならない。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2019年03月14日 | Permalink

会社法改正要綱案

 平成31年1月16日、会社法制部会で、第2次会社法改正要綱案がとりまとめられました。
 第1部は、株主総会に関する見直しが扱われ、株主総会資料の電子提供制度と株主提案権の濫用防止が検討されています。
 第2部は、取締役に関する見直しが扱われ、取締役の報酬等等に関する規制が盛り込まれました。それと、社外取締役の義務化も。
 第3部はその他で、社債管理補助者制度の新設や株式交付制度の新設が盛り込まれています。
 なお、付帯決議として、会社代表者の住所の開示について言及されています。
 この改正については、通常国会提出が目指されている。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2019年02月08日 | Permalink

商法(運送・海商)の改正(7)旅客運送

 旧商法は、もともと旅客運送に関しては、損害賠償(人身・手荷物)の責任規定を、3箇条置いているだけだった。
 様々な議論を経て、結局、置かれた新条文は、6箇条に増えた。増えたというよりは、6箇条に止まったと評する方が正しいだろう。
 特筆すべきは、人身損害に関して、免除・軽減特約を無効とする片面的強行規定を新設したことである。分科会では、この点が最大の論点となったということである。
- - - - - - - - - - - - - - - - - -
(特約禁止)
第五百九十一条 旅客の生命又は身体の侵害による運送人の損害賠償の責任(運送の遅延を主たる原因とするものを除く。)を免除し、又は軽減する特約は、無効とする。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
 一 大規模な火災、震災その他の災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において運送を行うとき。
 二 運送に伴い通常生ずる振動その他の事情により生命又は身体に重大な危険が及ぶおそれがある者の運送を行うとき。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2018年12月21日 | Permalink

商法(運送・海商)の改正(6)被用者の不法行為責任

 運送人の損害賠償責任は、通常、その被用者の行為によって生じる。そして、荷受人・荷受人は、運送人に対する損害賠償請求とともに、当該被用者に対する不法行為責任に基づく損害賠償請求が行われる。
 このように状況のももとでは、改正商法587条により債務不履行責任の制限的規定を運送人に対する不法行為責任に準用しても、結局は、荷送人・荷受人が被用者の不法行為責任を追及し、運送人が被用者からの求償に応じれば、運送人は、責任制限をうけることができなくなってしまう。
 そこで、被用者の不法行為責任も、運送人の責任制限が及ぶことにして、この循環を解消することとした。

新商法588条(運送人の被用者の不法行為責任)
 前条の規定により運送品の滅失等についての運送人の損害賠償責任が免除され、又は軽減される場合には、その責任が免除され、む又は軽減さける限度において、その運送品の滅失等についての運送人の被用者の荷送人又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任も、免除され、又は軽減される。
2 前項の規定は、運送人の被用者の故意又は重大な過失によって運送品の滅失等が生じたときは、適用しない。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2018年12月13日 | Permalink

商法(運送・海商)の改正(5)損害賠償請求権の競合

 運送人に対する債務不履行損害賠償請求権と不法行為損害賠償請求権との競合については、判例は、原則として、肯定する立場を採用してきた。
 しかし、それでは、商法が様々な責任制限規定を置いて、運送の責任を限定しても、不法行為責任の追及により、無に帰することとなっていた。
 そこで、判例も、宅急便の事件において、信義則上責任制限限度額を超えて運送人に対して損害の賠償を求めることはできないとして、その姿勢を変更し始めていた。
 それを受けて、改正商法は、運送人の責任制限のいくつかの規定を、不法行為責任の追及にも及ぼすことを定めた。ほぼその通り、判例の考え方を採用した。

新商法第587条(運送人の不法行為責任)
 第576条、第577条、第584条及び第585条の規定は、運送人の滅失等について運送人の荷送人に又は荷受人に対する不法行為による損害賠償の責任について準用する。ただし、荷受人があらかじめ荷送人の委託による運送を拒んでいたにもかかわらず荷送人から運送を引きうけた運送人の荷受人に対する責任については、この限りでない。


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2018年12月06日 | Permalink