会社法改正と簡易合併の公示

会社法改正と簡易合併における反対株主の株式買取請求権の適用除外

平成26年会社法改正により、存続会社等に適用される簡易合併等の簡易組織再編においては、反対株主に与えられていた株式買取請求権が付与されないこととなりました。具体的には、反対株主の株式買取請求権に関する規定である会社法797条1項ただし書として、「第七百九十六条第二項本文に規定する場合(第七百九十五条第二項各号に掲げる場合及び第七百九十六条第一項ただし書又は第三項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。」を、追加した。このことにより、簡易合併の場合においては、反対株主には株式買取請求権が与えられないこととなった。その改正趣旨は、、そもそもが、簡易合併では、株主の意思を仰がないとして、株主総会決議による承認を不要としたのであるから、その整合性との関係で、株主には大きな影響を与えないはずであるから、反対株主の株式買取請求制度による投下資本回収権の保障も、同様に不要であると考えられたからである。

簡易手続における株主への公示(会社法797条3項・4項)

「反対株主の買取請求」という表題が付された会社法797条には、その3項で株主への通知を、また、第4項で、公告についての会社側の義務が規定されている。そして、この条項は、一般的には、反対株主に対して、その手続的要件である反対の意思の通知(会社法797条2項1号イ前段)を促すためのものであると理解されてきた。そのことによって、簡易合併では、反対株主の株式買取請求制度が廃止されたことにより、会社法797条全体が適用されないと勘違いして、この株主への通知又は公告は不要になったと思い込んでしまう者が現れてしまった。しかし、大きな誤解である。
なぜなら、会社法797条1項ただし書は、本文の適用除外を定めるのみであり、、3項・4項の適用除外を定めていないものである。すなわち、会社法改正後の簡易手続きでも、株主への通知又は公告は、しなければならないのである。

会社法797条3項・4項が適用されなければならない理由

簡易手続においては、実は、反対株主の通知が、原則として、1/6の議決権数を超えると、簡易手続を行うことはできず、株主総会による合併契約書の承認という手続が必要となる(会社法796条3項、会社法施行規則197条)。そして、この反対株主の通知を促す制度としても、会社法797条3項・4項は、必要となるからである。ちゃんと「第七百九十七条三項の規定による通知又は同条四項の規定による公告の日から二週間以内に」と明記されている。
いわゆる証券代行がサポートしている上場会社では、こうした混乱はないと考えられるが、非上場の公開会社や非公開会社で、簡易合併をするときはには、会社法797条3項・4項違反という手続瑕疵をしないように気をつけていただきたい。

<会社法改正前の例>
なお、会社法改正前は、会社法796条4項でした。

<会社法改正後の例>


投稿者名 池野 千白 投稿日時 2018年02月28日 | Permalink