遺産分割手続き(相続人間の協議?裁判制度)

        <1> 相続人間での遺産分割協議
                    ↓
               (協議決裂の場合)
                    ↓
        <2> 家庭裁判所での遺産分割調停
                    ↓
               (調停不成立の場合)
                    ↓
       <3> 家庭裁判所での遺産分割審判
                    ↓
           (審判内容に不服がある場合)
                    ↓
       <4> 高等裁判所への即時抗告
                    ↓
 (憲法で保障された財産権を侵害しているなど、憲法違反の理由がある場合)
                    ↓
       <5> 最高裁判所への特別抗告

死後離縁と相続

 養子縁組は、養親又は養子が死亡しても、そのことをもって自然に解消(離縁)とはなりません。養親又は養子が死亡した後で、その者と養子縁組をしている生存当事者が離縁をする場合、家庭裁判所の許可を得る必要があります。これを「死後離縁」といいます。
 そして、死後離縁した場合も、養親子関係に基づき既に生じた相続における相続人の地位は、影響を受けることはありません。つまり、養親死亡後に相続人である養子が養親との養子関係を死後離縁した場合でも、養子は依然として亡養親の相続人のままとなります。
ただ、死後離縁の手続を行うことにより、生存当事者と死亡当事者の親族との間の親族関係を解くことができます。例えば、養親が死亡した後に、養子が死後離縁の手続を行うことにより、養子縁組先の兄弟姉妹との親族関係が無くなることになるので、将来的に養子が志望した際に発生する相続の際には、養子縁組先の兄弟姉妹は相続人の資格が無いことになります。

相続財産管理人

相続人がいないときや、相続人の存在、不存在が明らかでないときなどには、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立をします。
申立は、利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)が行います。


なお、「相続人がいない」という状態は、相続人全員が相続放棄をして相続する者がいなくなった場合にも生じます。
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人とはならなかったものとみなされますが、民法940条1項は、相続放棄をした相続人は、後順位の相続人が相続財産管理を始めることができるまでは、自己の財産と同一の注意をもって相続財産管理を継続する必要があると定めています。
最後に相続放棄をした相続人には後順位の相続人がいませんので、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立をし、相続財産管理を引き継いでもらうことにより、自らの相続財産管理業務を免れることができます。


相続財産管理人には、通常は地域の弁護士が選任されます(申立時に候補者を推薦することもできます)。
相続財産管理人は、被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、その後家庭裁判所が相当と認めるときは、被相続人の特別縁故者からの申立に応じて相続財産分与が行われる場合もあります。
清算後に残余財産がある場合は、国庫に帰属されます。

相続手続きの流れと弁護士の関与

【相続手続きの流れ】
         1.被相続人の死亡(相続開始)
       <市区町村長に死亡届を提出(7日以内)>
                   ↓
         2.遺言書があるかないかの確認
  <自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要>
                   ↓
              3.相続人の確定
               <相続人調査>
                   ↓
             4.相続財産の調査
                   ↓ 
         5.相続放棄・限定承認手続
  <被相続人名義の借金がある場合は、相続放棄や限定承認を検討し、
      相続開始を知った時から3ヶ月以内に手続きを行う。>
                   ↓
              6.準確定申告
       <所得税の申告・納税を行う(4ヶ月以内)>
                   ↓
              7.遺産分割協議
  <相続人全員で遺産分割方法を話し合い、遺産分割協議書をまとめる>
                   ↓
           8.遺産の分配・名義変更
   <不動産所有権移転登記や預貯金の名義変更などを行う>
                   ↓
           9.相続税の申告・納税
       <税務署へ申告・納付する(10ヶ月以内)>


【弁護士の関与】
「3 相続人の確定(相続人調査)」「4 相続財産の調査」
 戸籍や不動産登記簿謄本などの調査が必要ですが、時間や手間がかかるため、相続人の方がご自分で取得することが難しい場合等、弁護士が代わって手続きをします。

「5 相続放棄・限定承認手続」
 必要書類を揃えて迅速に家庭裁判所に申述する必要があり、弁護士が委任を受けて手続きを行ないます(「限定承認、相続放棄」参照)。

「7 遺産分割協議」
 弁護士は相続人から依頼を受けて協議をまとめたり、協議が決裂した場合には家裁へ調停の申立をしたりします。

売却土地の登記が、売主から買主に移されないまま買主が死亡。

このような場合、相続により、買主の相続人が買主となりますので、売主から相続人へ移転登記することが可能です(売買の書類と相続の書類両方必要となります)。
ただし、売主が相続人への移転登記を拒否した場合、買主の相続人が自分名義の登記をするには、裁判で所有権移転登記請求をした上で、登記を移転する手続きをとります。
登記を放置しておくと、長年の経過により第三者に所有権が移転されたり、登記名義人に悪用されるおそれもありますので、なるべく早く専門家に相談することが望ましいでしょう。

普通養子縁組と相続

1 養子が養親、実親の相続人になる場合
 普通養子縁組の場合、養親と養子との間に新たな親子関係が生じますが、養子と実親との親子関係が消滅する訳ではありません。
 つまり、養子は養親が死亡した場合に法定相続人となるだけでなく、実親が死亡した場合にもその法定相続人になります。
(これに対し、特別養子縁組の場合、実親と特別養子に出した子供との親子関係は終了しますので、特別養子縁組に出た子供と実親は互いに相続人になることはありません。)


2 養親、実親が養子の相続人になる場合
 養子となった子が養親や実親よりも先に死亡した場合には、養親、実親ともに法定相続人になります。この時、実親と養親の法定相続分の割合は同じです。
<例>
養子が死亡し、その法定相続人が養父、養母、実父である場合、各法定相続分は、養父1/3、養母1/3、実父1/3。


3 養子が兄弟姉妹と共に相続人になる場合
 養子は、実の兄弟姉妹、養子縁組による兄弟姉妹と同じように法定相続人となります。
 ただし、兄弟姉妹が複数いる時、両親ともに養子縁組した養子は他の兄弟姉妹と同じ割合で相続分を有するのに対し、片親とだけ養子縁組した養子の相続分は、他の兄弟の法定相続分の1/2となります。
<例>
父Aが死亡、相続人はAの実子B、Aの養子C(A夫婦と養子縁組)、Aの養子D(Aのみと養子縁組)だった場合、BCDの相続分割合は2:2:1となり、B2/5、C2/5、D1/5。


4 養子が養親より先に死亡した場合の代襲相続
 ・養子縁組前に生まれた養子の子供は、代襲相続人になりません。
 ・養子縁組後に生まれた養子の子供は、代襲相続人になります。
 これは、代襲相続人は直系血族でなければならないところ、養子縁組前に生まれた養子の子供(養子の連れ子)と養親との間には血族関係が生じないためです。

預金取引記録開示の請求

 親の死亡によって相続が開始したが、貯金通帳を持っている兄弟が勝手に親の預金から引き出してしまっている心配がある場合、親の預金残高がいくら残っているのか知りたいといった場合、預金口座のある金融機関に対して、預金取引記録の開示を請求するという方法が有効です。金融機関から預金取引記録が開示されれば、現在の預金残高や、いつ幾ら引き出されたか等の情報が明らかになるからです。
 従来、一人の相続人が単独で、預金取引記録の開示請求ができるかについては争いがあり、金融機関によっては開示請求を拒否することもあったようです。
 ところが、最高裁判所は平成21年1月22日の判決で、「金融機関は、預金者の共同相続人の一人から単独での取引履歴の開示請求に対しても、開示する義務を負う。」と判断したため、相続人は、兄弟など他の相続人の協力が無くても、単独で金融機関に預金取引履歴の開示を請求できることになりました。
 遺産分割の話し合いの前提として親の預金について把握しておきたいなどという場合、この方法を利用されてはいかがでしょうか。