弁済猶予を認める場合の交渉術①

 取引先が,売掛金の支払について支払猶予(弁済期延長,分割弁済等)を求めてきた場合,頭を抱える経営者の方は多いのではないでしょうか。親身になって協力してあげることも一策ですが,リスク回避の観点からは,正にこの時が勝負所になります。

強制執行に向けた情報収集

 相手が“お願い”をしているのですから,こちらからも条件を付けて交渉することが肝要です。必ず意識して欲しい点としては,強制執行を見据えた相手方財産の把握です。
 経営状況を知るために,貸借対照表と損益計算書だけ見せてもらっても,債権回収の場面では何の役にも立ちません。相手名義の財産が記載してある勘定科目内訳明細書を必ず見せて貰うようにしましょう。また,シンプルに,会社名義の通帳の写しを貰うことでも良いです。

保証人の徴求

 債権回収の担保のため,人的保証を要求することも,伝統的手法です。会社代表者自身は,既に銀行融資の連帯保証人に設定されていることが多いので,代表者以外の者(配偶者・前代表者等)を保証人に設定すると良いでしょう。
 もちろん,保証人候補者の財産状況についても,確認を心掛けてください。保証人を設定せいても,保証人に資力がなければ何の意味もありません。

債権・動産の譲渡担保設定

 銀行融資の抵当権が設定されていない,相手方の売掛金や在庫商品・重機類に譲渡担保を設定することが,有効な担保設定方法です。譲渡担保の場合,名義を移すか,動産・債権譲渡特例法による占有移転の公示をするだけで,危機時期に裁判所での裁判・強制執行をすることなく担保実行が可能です。
 もっとも,売掛金等の債権の場合には,第三債務者の資力等による回収リスクがあり,動産・重機類の場合には換価可能性・容易性が問題となります。


投稿者名 柴垣直哉 投稿日時 2017年06月23日 | Permalink