1 事前にしておくべきこと
a 取引時に、相手先から連帯保証人をとっておくこと
  その際、連帯保証人の資産を開示してもらっておけば、すぐに動くことができる。連帯保証人としては、代表者または役員が考えられる。

b 相手方の取引銀行の情報をつかんでおくこと
  取引銀行を知っていれば、取引口座の取引履歴を銀行から取り寄せることができ、取引履歴を見れば、入金欄から取引先、支出欄から後述する生命保険会社名が判明する場合もある。

c 相手方所有の不動産情報をつかんでおくこと
  相手方の本店所在地の登記簿謄本を入手する。代表取締役の住所は、登記事項なので、代表取締役の住所地の謄本も取っておくとよい。
  本店所在地が賃貸物件である場合は、貸主が誰かをつかんでおく(登記簿謄本からわかる)。相手方と連絡が取れなくなった場合、貸主が状況を知っている可能性があるし、場合によっては、保証金差押ができる場合もある。
  賃貸ビルなどの収益物件情報は、信用調査会社(帝国データバンク等)を利用するなどしてつかんでおくとよい。

d 財務分析をしておくこと
  相手方の財務諸表を閲覧し、貸借対照表から流動比率(流動資産/流動負債×100)や当座比率(当座資産/流動負債×100)をつかんでおく。数値が100を下回っていると、要注意(1年以内に支払期日が到来する債務に対して、すぐ資金を準備できないことを示す指標)。

2 相手方が倒産した場合にするべきこと(差押え準備)
a 取引先情報をつかむ
  方法としては、決算書類を見ることができれば一番よいが、通常は無理。
  次善の策として、取引口座の取引履歴(過去3ヶ月くらい)を取り寄せてみる、信用調査会社(帝国データバンク等)を利用する、などが考えられる。
  取引先が判明したら、売掛金等について仮差押の準備をするか、判決をとって本差押をする。

b 相手方加入の生命保険がないか調べる
  方法としては、取引口座の取引履歴(過去3ヶ月くらい)を取り寄せてみると、保険料の振込先から保険会社名が分かる場合がある。
  
c 不動産が差押可能か検討する
  謄本から、抵当権による被担保債権がどれくらいあるかわかるので、それと不動産評価額を比べる。抵当権付債権は、一般債権より優先するので、抵当権付債権額が不動産評価額を上回っていると、配当がないので差押しても無駄。不動産評価額については、時価がわかれば一番よいが、わからなければ、相続税路線価などから推計する。ただし、競売になった場合、通常の取引価額の6?7割程度になるので注意が必要。
  あと、貸しビル業者の場合、収益物件を持っているので、賃料の差押が可能である。収益物件の所在が分かれば、現地へ行って入居者を確認する。通常1階にネームプレートがあるはず。ない場合は、管理会社に聞く方法もある。

d 銀行預金調査を行う
  取引銀行には口座はあっても、通常借り入れもあるので、差押しても借入金と相殺されてしまう。しかし、取引銀行を調べると、取引先や生命保険会社が分かる場合があるし、証券投資信託などの他の金融資産が見つかるかも知れない。


 数十万円くらいまでの債務について、債務者の対応を見ると、いろいろと気がつくことがある。
 1番気がつかされたことは、人間の応対は、いろいろあるように見えても共通点があり、グループ分けできるということである。これは、あたり前のことにすぎないかもしれないが、1500名ほどの債務者と対応して実感したことである。企業家の眼からは、当然のことが、弁護士の立場として経験がなかったということだろう。
 たとえば債務者の弁解も、いくつかのパターンになる。ここでは、具体的なパターンを記述しないが、いくつかのパターンから、その人柄もグループ化しようと思えばできてしまう。このようにしてでき上がる債務者のモデルは、自分の経験となるものと思う。