離婚・離縁・認知等の場合

①家事調停(調停前置:家事事件手続法257条1項)
②調停不成立時には人事訴訟を別途提起して争う

婚姻費用分担・養育費・面会交流・財産分与・年金分割・子の引渡しの場合

①家事調停又は家事審判(家事事件手続法39条,同法244条)
 ⇒実務上は審判申立しても調停に付されることが多い(事実上の調停前置)
②調停不成立時には家事審判に自動移行(家事事件手続法272条4項)


家事調停とは

 調停は,裁判所を介した話合いの手続です。当事者本人には出頭義務が課されており,やむを得ない場合のみ代理人出席にて代行できます。(家事事件手続法258条1項,同法51条2項)

申立方法

 申立書,申立実情書,証拠資料,添付書類(戸籍謄本・住民票等),申立手数料(収入印紙),予納郵券(各裁判所所定額)を管轄地の家庭裁判所に提出します。
 裁判所では,申立てから約1か月後に調停期日を定め,申立書・証拠書類の写しを相手方に送付します。手続を管理する調停委員会(調停官1名と家事調停委員2名)も,申立書類を事前に閲読した上で,期日に臨みます。

手続の進行

 双方は,別々の待合室で待機して,呼出しに応じて調停室(6畳間程度)に案内されます。調停室内には,男女2名の調停委員がいて,当事者の本人確認を行った上で,質疑応答を行います。
 双方が申立事項に合意できれば調停調書を作成して手続は終了となり,合意に至らなければ調停官が不成立を宣言して終了となります。
 調停室に同席できるのは,当事者本人(又はその法定代理人)と弁護士のみです。

家事調停から弁護士に依頼するメリット

①訴訟・審判を見据えた書類作成
 調停は建前上“話合い”となっているため,「法律云々は問わず,話をすれば裁判所がまとめてくれる。」と誤解されている方が多数見受けられます。実際の手続では,限られた時間に主張内容を把握してもらうべく,書面化して事前提出することが必要ですし,訴訟・審判における予想最終状況を見据えて譲歩した着地点であることを,証拠と共に説明しなければ,調停委員会が相手方を説得する材料が無いことになってしまいます。
 その意味で,家事調停手続は,訴訟・審判の準備段階と捉えて頂く必要があり,紛争としては訴訟・審判とワンセットで対応するべきものといえます。そして,当該紛争全般にサポートできるのは,法律上,弁護士のみです。

②証拠収集
 家庭内紛争では,証拠に乏しい傾向があります。家庭内の状況を日頃からメモをしたり,会話を録音したり,写真に収めていたりすることは稀だからです。
 事実関係を精査するべく,もっとも単純な方法としては,当事者による時系列表の作成になります。これは,後々,訴訟等に発展した場合には,尋問手続に先立って陳述書を作成する材料としても有意義な資料となります。
 そして,何よりも客観的資料の獲得が必要です。当事者から食い違った事実関係が主張された場合,どちらが正しいのかは証拠で決まります。信用力のある客観的証拠をどれだけ揃えられるか,それこそが弁護士のノウハウの一つであり,活用していただきたい部分でもあります。

③相手方・調停委員会との駆け引き
 調停であっても,最終的な着地点を見出すためには,駆け引きが必要です。柔軟な姿勢を見せ過ぎると調停委員が自分の方ばかり譲歩を求めてくるようになり,最低ラインを下回る解決しかできなくなることもあります。しっかりとした根拠を持ちつつ,時には覚悟を決めて確固たる姿勢を打ち出す必要があります。その際,調停室の場であなたを支えて主張をすることができるのは,弁護士だけです。