モラルハラスメントとは?

 近時,離婚原因としてモラルハラスメント(以下「モラハラ」という。)の主張を希望する依頼者が増加しています。
 私の経験上でも,①夫婦喧嘩の粋を超えた暴言,②無視・放置,③ステレオタイプな意見の押し付け,④過度の経済的制約,⑤夫婦間扶助義務に反する言動,等がモラハラに該当するとして多く展開されている印象があります。
 モラハラ自体,比較的新しい用語であるため,講学上の確定した意味合いを有しておらず,使用する人によって意味の変わる多義的な概念となっているのが現状です。

離婚原因として主張できるのか?

 理論構成としては,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号:婚姻関係が不治的に破綻している場合 )に該当するとして主張・立証を尽くすことになります。
 モラハラ主張は,虐待概念における経済的暴力・社会的隔離・心理的虐待とも重なる部分があり,前記3点の虐待手法のうち,虐待とまでは評価できない部分であっても,離婚原因としては有用となる場合があるでしょう。
 
 結論としては,離婚原因の一部として利用することが可能ということです。

 単一事象としては婚姻関係不治的破綻への寄与が乏しいため,主張方針としては複数事象を積み重ねていくことが必要になってきます。相手方配偶者の問題言動を具体的に把握し,俯瞰的視点で自身が精神的苦痛を受けるに至ったプロセスを理解し,文章に纏めることが肝要です。立証方針も,陳述書のみでは証拠構造上心許ないため,早期の段階で,弁護士に相談をして,客観証拠の有無を確認することが大切です。


信義則による離婚請求の制限

 有責配偶者とは,夫婦関係の破綻に専ら又は主として責任のある配偶者を指します。有責配偶者からの離婚請求は,一定の場合,信義則違反として制限されることがあります。ポイントは,必ず制限される訳では無いところです。
 信義則違反とまでいえるか否かは,離婚原因作出の態様・程度,他方配偶者の被害感情や婚姻継続意思の有無,別居後の生活状況や時間経過,離婚時の他方配偶者及び子供の予測状態等を総合考慮して判断されます。判例では,以下の3点を重視している事例もありますが,必ずしも全て要求していない事例もあり,信義則違反を確実に回避できる例外要件は確立していません。
 ①別居期間が同居期間との対比で長期化している
 ②夫婦間に未成熟の子が存在しない
 ③他方配偶者が離婚後に精神的・経済的に著しい苛酷状況に陥らない

有責配偶者が離婚したい場合には

 結論から言えば,時間・費用をかけて誠実に交渉し,信義則違反を回避していく必要があります。例えば,別居期間をある程度継続し,その間の婚姻費用分担金を支払い,場合によっては慰謝料相当額を支払い,子供が高校生以上になるまで養育監護に協力し,離婚後の生活状況変動を少なくするために財産分与を潤沢にする等の対応をしていくことが考えられます。また,駆け引きにはなりますが,他方配偶者に対し,婚姻継続意思を断念させるよう行動していく手法も考えられます。
 この点は,事案に応じて対応する必要がありますので,是非,弁護士にご相談していただきたいところです。


モラルハラスメントは、言葉や態度によって、精神的に人を傷つけることを言います。閉じられた空間で行なわれるため、外部の人に分からないことがほとんどです。そして、それらを長期に渡り繰り返すことにより、被害者を追い詰めていきます。
しかしながら、その言動の一つ一つみるとそれほど問題であるともいえないため、加害者がこれらの言葉を使い、巧妙に被害者を傷つけたという事実を証明する(立証)のは困難です。

では、どのように立証したらいいのでしょうか。

モラルハラスメントを立証する場合、些細な出来事の主張、立証をいくつも積み重ねることが大切です。それらの言動が反復的であり、長年に渡り、あなたが傷ついたということを証明することが必要なのです。
もし、あなたが日記をつけているのなら、それも立派な証拠といえるでしょう。相手からのメールやメモ、ファックスがあればそれも証拠の一つになります。

では、上記のような証拠がない場合。

あなたが相手と婚姻をした日から今日離婚を考えるようになった経緯を書いていきます。
思い出せる範囲で構いません。出来事だけを書くのではなく、それと同時にあなたが感じたことも書き綴っていきます。
あなたが相手から言われ続けてきた言葉の数々を覚えている範囲でいいので、いつ、どんな言葉を言われたのか、そして、それに対してあなたがどう感じたのかも書きましょう。長年に渡る相手からの言動で嫌に思ったことがあれば、それもすべて書いていきます。

このように地道ではありますが、長年にわたる相手との生活を辿っていくことで、あなたの主張することはより精密で詳細なものとなり、事実であることを証明することができます。


 有責配偶者からの離婚請求が,信義則上制限される可能性があることは別記事で取り上げました。では,有責配偶者が男性であるか,女性であるかによって,制限に差異が生じるのでしょうか。

最高裁判例の射程

 有責配偶者からの離婚請求を制限した最高裁判例は,夫側が不貞行為を行った事案でした。そうすると,妻側が不貞行為して未成熟子を連れて別居し,併せて離婚請求した場合は,事案を異にすることから最高裁判例の射程が及ぶか否か,検討の余地があります。
 興味深い裁判例としては,東京高裁判決平成26年6月12日(判例時報2270号63頁)が挙げられます。この事案は,別居期間が僅か2年で,離婚請求が認容されています。別記事で紹介したとおり,男性有責配偶者からの離婚請求は,別居期間の長期化,未成熟子の不存在,他方配偶者に離婚後において苛酷状況が生じないこと等,厳しい要素が求められるのに対して,制限が緩和されているようにも見て取れます。

裁判官の感覚

 判例が統一的な見解を打ち出していない争点については,最終的には個々の裁判官の見識と良心に委ねられています。あるベテラン裁判官の講演においては,有責配偶者からの離婚請求を制限した最高裁判例は,他方配偶者の“踏んだり蹴ったり”状態を回避することを目的としており,その状況は,経済的なものから子供への関与状況も含めて判断した場合,男女間で大差は生じないと語られていました。

実際の状況

 女性側が有責配偶者である場合,経済面で男性側に不利であったとしても,それを承知の上で離婚請求しているのですから,経済的部分での他方配偶者への譲歩は,低廉ないし不必要と思われます。残るは,子の福祉の観点であり,面会交流等で寛容な姿勢を示すことは,少なからず求められるだろうと思料します。
 こうしてみると,結果的には,男性側の有責配偶者に比して女性側の有責配偶者の方が,離婚請求を容認される余地は大きいというのが実情でしょう


モラルハラスメント(モラハラ)とは、言葉や態度によって巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力のことを言います。

モラルハラスメントは、肉体的な暴力ではないため、非常に理解されにくいのが現状です。また、精神的な暴力といっても、個々の言葉や態度の一つには特に問題な行為ではないため、モラルハラスメントを受けている本人も始めは被害に遭っていることを気づかないことがあります。しかし、精神的な暴力が日常、何年にも渡って繰り返されるうちに、被害者は混乱し、相手の顔色をうかがい、常に緊張と不安を抱くようになります。無視や皮肉を巧みに利用するモラルハラスメントに遭うと「悪いのは自分だ」と感じ、罪悪感でさらに追い詰められてしまうこともあるのです。

夫婦間でも、相手が、突然、些細なことで不機嫌になり、無言、無視を繰り返し、話を巧みにすりかえ、こちらの混乱に応じて自分の都合のよい方へ導くため、悩まされている人が多くいます。

自分がモラルハラスメントに遭っているのではと感じたら、まずは知識を得ること、そして誰かに相談することが大切です。
そして、このモラルハラスメントは、裁判上の離婚原因の一つ、婚姻を継続しがたい重大な事由の一つとしてあげることができます。



 日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,1番目に登場するのが「配偶者に不貞な行為があったとき。」(民法770条1項1号)です。
 不貞行為とは一体どんな行為なのか,説明していきたいと思います。

不貞行為の意義

 判例では,不貞行為とは「配偶者ある者が配偶者以外の者と相互に自由意思に基づいて性的関係を結ぶこと」と定義されています。〔最一小判昭和48年11月15日民集27巻10号1323頁〕

外形的要件:性交渉(男性器の女性器への挿入)の存在
 性的関係をどこまで拡張解釈するかによりますが,性交渉が含まれることには争いがありません。裁判例を見る限り,性交渉以外の肉体的接触行動は,別の離婚原因「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の要素として扱われることになります。

内心的要件:自由意思の存在
 心神喪失状態にある場合や強姦された場合には,当該要件を欠き,不貞行為とはなりません。もっとも,泥酔状態のような自らの過失で招いた無意識状態中については,自由意思がなかったとは判断されないでしょう。

不倫という言葉

 不倫とは人倫に外れることであり,不貞行為も含む多義的な概念です。日本で使用される場合は,①配偶者ある者が,②配偶者以外の異性と,③親密な交友を持つという意味で使用されることが多いでしょう。
 そして,③がどこまで許容内か否かは,社会道徳や配偶者の倫理観によっても変化します。ハラスメント問題と等しく,被害者側(不倫された他方配偶者)がどのように思うかで,重さが異なってきます。
 例えば,配偶者ある者が,配偶者以外の者とキスをすることは,不貞行為ではないものの,不倫行為と評価されることはあり,程度によっては夫婦の信頼関係を著しく傷つけることになり,別の離婚原因「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」の要素になる可能性もあります。

不貞行為に対する社会の変化

 女性が配偶者以外の男性と性交渉をした場合,戦前は『姦通罪』(刑法183条)で2年以下の懲役刑が予定されていました。女性のみ成立しうる身分犯であり,古くは江戸時代の刑法である公事御定書にも処罰しています(刑罰は重く,妻と不倫相手は死刑でした。)。
 戦後,憲法14条に所定する法の下の平等に反するとして,削除されました。
 現在では,裁判上の離婚原因に直接(不貞行為の場合)又はその要素(不貞行為以外の性的関係の場合)となる点,不貞配偶者の他方配偶者に対する貞操義務違反及び不貞第三者の他方配偶者に対する「夫婦としての実体を有する婚姻共同生活の平和の維持」を侵害する不法行為になる点,つまり民事上の意義を有するに止まります。

一時的な関係の場合は?

 不貞行為の外形的要件は,性的関係が一時的な関係であるか継続的関係であるか,同棲を伴うか否か,売春的行為であるか否か,又は売春婦を相手方とした行動であるか否かは問わないと考えられています。
 そのため,一度だけの性交渉でも不貞行為に該当し,風俗店で性交渉をすることも不貞行為に該当します。


 保護命令とは、配偶者からの身体に対する暴力または生命等に対する脅迫を受けた被害者が、配偶者から受ける身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、裁判所が被害者からの申立てにより、当該配偶者に対して発する命令のことです。

※この場合の『配偶者』には、婚姻の届出をしていないいわゆる「事実婚」も含みます。男性、女性の別を問いません。また、離婚後(事実上、離婚したと同様の事情に入ることを含みます。)も引き続き暴力を受ける場合を含みます。

保護命令には、次の5種類があります。
第1 被害者への接近禁止命令
   被害者へのつきまといや、被害者の住居、勤務先などの付近を徘徊してはならないことを命ず
 る保護命令(期間は、6か月間

第2 被害者への電話等禁止命令
   被害者への接近禁止命令の期間中、次に掲げるいずれの行為も禁止する保護命令

  1.面会の要求
  2.行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
  3.著しく粗野又は乱暴な言動
  4.無言電話、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して電話をかけ、ファクシミリ装置を用
   いて送信し、若しくは電子メールを送信すること
  5.緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に電話をかけ、ファクシミリ
   装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること
  6.汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又は知
    り得る状態に置くこと
  7.名誉を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
  8.性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくは知り得る状態に置き、又は性的羞恥心を害する
   文書、図画その他の物を送付し、若しくは知り得る状態に置くこと

  ※ 被害者からの申立てにより、被害者への接近禁止命令と同時、又はその発令後に発令さ
    れます。

第3 被害者の子への接近禁止命令
   被害者への接近禁止命令の期間中、被害者の同居している子の身辺につきまとったり、子の
 学校等の近くを徘徊してはならないことを命ずる保護命令
   被害者からの申立てにより、被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを
 余儀なくされることを防止するため必要があると認める場合に、被害者への接近禁止命令と
 同時に又はその発令後に発令されます。

  ※ 当該子が15歳以上のときは、子の同意がある場合に限ります。

第4 被害者の親族等への接近禁止命令
   被害者への接近禁止命令の期間中、被害者の親族その他被害者と社会生活において密接
 な関係を有する者(以下「親族等」という。)の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の
 付近を徘徊してはならないことを命ずる保護命令
  ※ 被害者への接近禁止命令と併せて(被害者への接近禁止命令と同時又は被害者への接
   近禁止命令が発令された後)発令されます。
  ※ 当該親族等が被害者の15歳未満の子である場合を除き、当該親族等の同意があるとき
   に限ります(当該親族等が15歳未満又は成年被後見人である場合には、その法定代理人
   の同意)。
  ※ 配偶者が親族等の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることなどか
    ら、被害者がその親族等に関して配偶者と面会せざるを得ない事態が生じるおそれがある
   場合に、被害者の生命又は身体に対する危険を防止するために発せられます。

  ※ 保護命令で保護される範囲は、被害者及びその親族までとなります。
     仮に被害者の友人(被害者の行方を知っている等の理由で)に対してもつきまとい行為が
    あっても、第三者の友人までは保護は及びません。

第5 退去命令
   被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近を徘徊しては
  ならないことを命ずる保護命令(期間は2か月間)
  ※ 被害者と配偶者が生活の本拠を共にする場合に限ります。

☆配偶者である相手方が保護命令に違反すると
  刑事罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の制裁が加えられることになります。

申立をするにあたって、以下のことを記録したりまとめておくことが必要です。
 (1) 配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況
    (ex.いつ、どのような暴力、または脅迫を受けたか。
       受けた暴力により怪我をされた場合などは、診断書をとっておく等。)

 (2) 配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後
   の配偶者から受ける身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれ
   が大きいと認めるに足りる申立ての時における事情

 (3) 被害者の同居の子への接近禁止命令の申立てをする場合にあっては、被害者が同居し
   ている子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため被害者の同居の
   子への接近禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
   (ex.子を連れ去る危険の有無、子の連れ去り等の後、被害者との面会の強要など)

 (4) 被害者の親族等への接近禁止命令の申立てをする場合にあっては、被害者が親族等に
    関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため被害者の親族等への接近
    禁止命令を発令する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情
 (5) 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対して(1)から(4)までの事項につ
    いて相談し、又は援助若しくは保護を求めたことの有無及びその事実があれば、
   ア.相談、又は援助若しくは保護を求めた配偶者暴力相談支援センター又は警察職員の所
    属官署の名称
   イ.相談、又は援助若しくは保護を求めた日時・場所
   ウ.相談又は求めた援助若しくは保護の内容
   エ.相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容

  ※ 配偶者暴力相談支援センターや警察の職員に相談等をしていない場合は、(1)、(2)の
   事項についての申立人の供述を記載した書面を作成し、公証人役場へ行き、公証人の面前
   で作成した供述書の記載が真実であることを宣誓して宣誓供述書を作成します。その書面を
   保護命令の申立書に添付することが必要です。


 申立書は、?申立人の住所地、または居所
        ?相手方(配偶者)の住所地、または居所
        ?暴力等の行為が行われた場所
のいずれかを管轄する裁判所、または支部に提出します。

 しかし、配偶者暴力に関する保護命令の申立をするにあたり、注意点があります。
 (1) 申立人は、配偶者(元配偶者)からDVを受けた被害者本人に限られ、たとえ親族であって
    も、被害者に代わり申立をすることはできません。

 (2) この申立は、婚姻期間中に身体的暴力を受けておらず、離婚後より身体的暴力を受けるよ
    うになった場合は申立をすることができません。

 (3) 上記(5)の注意書きにも記載しましたが、申立を行なう前に、配偶者暴力相談支援センタ
    ー(DVセンター)、警察のいずれかに相談に行っていること、相談に行っていない場合は、
    公証人役場で宣誓をして宣誓供述書を作成していることが必須条件となります。
    このどちらかを行なってない場合は、保護命令は発令しません。


 暴力を振るう配偶者と離婚をする場合において、離婚の申し入れをすることによって、さらに配偶者から暴力、脅迫などの被害に遭う危険性が高くなることが予想される場合は、保護命令の申立を、離婚の調停、裁判を提起する際に同時に申立することも可能です。このような申立を行なうことで、配偶者からの暴力、またそれにともなう精神的ストレスを軽減することができます。


 日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,2番目に登場するのが「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」(民法770条1項2号)です。
 悪意の遺棄とは一体どんな行為なのか,説明していきたいと思います。

悪意・遺棄の意義

 「遺棄」とは,単に置去りだけでなく,正当な理由のない夫婦の同居・協力・扶助義務の不履行一般を意味します。そして,「悪意」とは,社会的倫理的非難に値する心理状態,すなわち,遺棄の結果としれ婚姻共同生活の廃絶を企図又は認容する意思を指します。
 典型的な行動は,夫が不貞相手と生活し,婚姻費用分担金を渡さないことです。

別居は悪意の遺棄となるか?

 別居は,それ自体が婚姻関係破綻の象徴的な行動ですが,直ちに悪意の遺棄に該当する訳ではありません。裁判例を見ても,合意で別居した場合は当然,DV被害回避のためや病気療養を目的とする別居には正当な理由があると考えられています。
 今日では,別の離婚原因「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の要素として扱われることが一般的です。


ドメスティック・バイオレンス(DV)とは、夫や恋人など、親密な間柄にある、またはあった男性から女性に対してふるわれる暴力のことをいいます。
また、近年、女性からのDVも社会的な問題となってきています。

これは、「よくある夫婦げんか」では片付けられない、大変身近な問題です。
暴力の形態としては、身体的なものから精神的なものまで多種多様に存在します。どんな暴力であれ、尊厳が踏みにじられ、外からは発見しにくいという、とても深刻な人権侵害なのです。
また、暴力は、繰り返され、だんだんエスカレートする傾向にあります。
DVの被害の深刻化を防ぐためには、早期の対応が必要です。

このような状況下で離婚を希望する方も少なくありません。
DVは、婚姻を継続しがたい重要な事由として、裁判離婚の離婚原因に含まれるため、離婚することは可能です。
しかし、離婚手続を進めると、相手からの暴力がより激しくなることもあります。そのため、専門家の助けをかりながら、離婚手続を進めていくことをお勧めします。


 日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,3番目に登場するのが「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。」(民法770条1項3号)です。
 生死不明とは一体どんな状況なのか,説明していきたいと思います。

生死不明の意義

 「生死不明」とは,生存も死亡も確認できない状態を指します。そのため,単なる別居や行方不明・住所不定は,これに含まれません。
 生死不明の期間は,起算点(=生存確認の最終時点)から3年以上が経過し,離婚訴訟の口頭弁論終結時まで継続していることが求められます。

失踪宣告制度との関係

 生死不明者については,失踪宣告制度(=一定要件を満たすことで法律上死亡擬制をするもの。)を利用することでも,実質的な婚姻関係の解消が可能です。もっとも,失踪宣告の後に,当人が生存していた場合には失踪宣告の取消しの可能性があり,必ずしも安定した結果が得られる訳ではありません。
 他方,当該離婚原因にて離婚訴訟が確定した場合において,事実審の口頭弁論終結時前に死亡していたと失踪宣告で認められると,離婚判決自体が事後的に無効となる可能性もあります。生死不明の配偶者と離婚する場合には,そのリスクを考慮しなければなりません。


 法定離婚原因として定められている「3年以上の生死不明」とは、最後に生存を確認できたときから現在まで、生きているのか死んでいるのか分からない状態が3年以上続いていることを言います。 住所や所在が分からず音信不通であっても、生存していることがはっきりしている場合は、行方不明であり生死不明には当たりません。
 また、配偶者が家族を捨てて出て行った場合は「悪意の遺棄」に当たりますので、3年間待つ必要なく離婚事由とされます(※「悪意の遺棄」欄参照)。

 配偶者が3年以上生死不明の場合、地方裁判所に提訴して離婚判決を得る事ができ、判決確定後に当人が姿を現わしても離婚判決が無効になることはありません。なお、裁判ではあらゆる手をつくして探したが見つからなかったとことを示す証拠資料が必要です。

 一方、配偶者が生死不明の場合にとれる方法として、「失踪宣告」制度の利用があります。これは配偶者の生存確認が最後に取れたときから7年以上、飛行機の墜落や船の沈没など特別な危難が去ったときから1年以上経つ場合に家庭裁判所に申し立てて、生死不明者の失踪宣告の審判を受けるものです。失踪宣告の審判が出され失踪期間が満たされると、失踪者は死亡したとみなされます。離婚のように財産分与や慰謝料は発生しませんが、残された一方は再婚することも可能です。
 ただし、失踪宣告の場合は後日失踪者が生存していたことがわかると、宣告が取り消されトラブルになる場合もあります。


 日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,4番目に登場するのが「配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき。」(民法770条1項4号)です。
 不治の精神病とは一体どんな内容なのか,説明していきたいと思います。

 医学的要素を含む法的概念

 当該要件は,①強度の,②精神病で,③回復の見込みがない,という3要素が必要になります。いずれも医学的要素を含む法律概念であるため,正常な婚姻共同生活の継続ができるか否かとう観点から判断されることになります。医学的な精神病症例への該当性や回復不能との医学的判断は,必須ではありません。
 事理弁識能力を欠く常況であることは必要なく,成年後見人が選任されていることをもって当該要件をすべて満たしていることにはならない点も要注意です。

裁量棄却の可能性

 実は,離婚原因に該当していても,裁判所は諸事情を考慮の上で,離婚を認めない判断をすることができます(民法770条2項)。
 配偶者(=病者)の今後の療養・生活等について具体的方途(例えば,実家が資産家であったり,扶養的財産分与による生活費支援等。)の見込みがない場合,同条項が適用されるというのが判例の見解です。


 民法は「夫婦は同居し、お互いに協力、扶助し合わなければならない」と定めており、これを「同居義務」「協力義務」「扶助義務」などといいます。5つの法定離婚原因のうちの1つ「悪意の遺棄」とは、この夫婦の同居義務、扶助義務等を不当な理由により果たさない場合のことです。

■同居義務違反
 同居義務違反による「悪意の遺棄」については、別居の期間について決まった基準がなく、過去の判例ではたった2か月間で「悪意の遺棄」にあたるとしたものがあります。つまり、期間の長短より遺棄の意思の明確さに重きが置かれていると言えます。
 黙って一方的に別居を始めることは、後に離婚の話し合いになった際に「悪意の遺棄」であるという非難を受けかねません。「うまくいかなくなった夫婦関係を調整するための冷却期間を置く別居」であれば同居義務違反による「悪意の遺棄」には当たりませんので、夫婦関係がこじれてお互いの意思で別居を開始する場合には別居前によく話し合い合意しておくことが必要です。
 上記の他に「悪意の遺棄」に当たらない別居事由として、「配偶者の暴力や酒乱による被害を避けるために一方が家を出たことによる別居」「子どもの教育上必要な別居」「病気治療のための別居」などが挙げられます。また、「夫婦関係が破綻した後の別居」は破綻の結果であって破綻の原因ではありませんので「悪意の遺棄」に当たりません。

■ 協力義務・扶助義務違反
 協力とは「婚姻状態における、あらゆるできる限りのお互いの手助け」です。例えば、夫が会社勤めで妻が専業主婦であれば、妻が家事を放棄した場合は  
「扶助義務」違反と言えます。一方、夫婦がそれぞれ仕事を持っている場合は妻だけが家事をすべきとは言えませんので、夫が家事に協力しないことが「扶助義務」違反になります。特に子供が小さければ、夫も少しでもその面倒を見るのは当然と判断されます。しかし、どの程度が協力をしたことになるのかはケースバイケースであり、簡単には線引きできません。
 具体的には「生活費を渡さない」「理由なく同居を拒否する」「家出を繰り返す」「夫婦の一方が相手を虐待して追い出したり、家を出ざるを得ないようにしむける」「健康な夫が働こうとしない」「生活費を送る約束で別居したが生活費を送らない」「妻と姑との折り合いが悪く、妻が実家に帰ったまま」などがこれにあたります。


 日本における離婚制度は,協議上(示談・調停)で離婚できない場合,離婚訴訟を提起の上で判決による離婚形成が必要になります。裁判上の離婚については,離婚原因が法定されており,最後に登場するのが「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」(民法770条1項5号)です。
 一体どんな内容なのか,説明していきたいと思います。

婚姻関係の不治的破綻

 当該離婚原因は,他の4つの例示を踏まえて抽象的・包括的に定められているものであり,全ての離婚原因に共通する要素,すなわち,婚姻関係が深刻に破綻し,共同生活の回復の見込みがない場合一般を指していると解されています。
 不治的破綻とは,夫婦としての信頼が完全に切れているという認識(主観的側面),外形的にも修繕不能状態と評価できる状態(客観的側面)の両面が必要です。

具体的な類型

認められる類型としては以下の通りです。詳細は,個別の記事をご参照下さい。
①長期の別居
②暴行・虐待等の犯罪行為
③不労・浪費
④過度な宗教活動
⑤軽度の精神障害
⑥セックスレス・異常性癖
⑦性格の不一致
⑧他方配偶者親族との不仲

 加えて,最近では,新しい類型も登場しています。モラルハラスメントは,その最たる例と言えるでしょう。


有責配偶者とは、婚姻破綻を自ら招いた者、すなわち、愛人と同棲をはじめて家を飛び出した夫(もしくは妻)のような者のことを言います。このような勝手に愛人をつくり同棲を始めた夫から、特に非のない妻に対して、離婚請求が許されるかが判例上も問題となりました。

 まず、民法770条1項5号は、客観的に婚姻関係が破綻している場合には離婚を認めるべきとする破綻主義法理に基づき、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には、離婚の訴えが提起できるとしています。
 ただ、婚姻破綻を自ら招いた者(有責配偶者)からの離婚請求を認めるべきか否かについては、明文の規定はおかれておらず、判例・学説にゆだねられています。

 この点、最高裁判決(最判昭和27年2月19日)は、妻以外の女性と同棲関係にある夫からの離婚請求について、「もしかかる請求が是認されるならば、妻はまったく俗にいう踏んだり蹴ったりである。法はかくのごとき不徳義勝手気侭を許すものではない」として請求を棄却し、以来、有責配偶者からの離婚請求は許されないという判例理論が確立しました。

 その後、30余年を経て、最高裁大法廷昭和62年9月2日判決は、従来の判例を変更し、一定の要件のもとで有責配偶者からの離婚請求も許される場合がある旨判示しました。
 すなわち、この判決は、「?夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、?その間に未成熟の子が存在しない場合には、?相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚を認容することが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情が認められない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」としました。

 この判決以降、有責配偶者からの離婚請求の可否については、別居期間、未成熟子の存在、苛酷状態等の事情を総合的に考慮して、有責配偶者の離婚請求が信義則に照らし許されるか否かを判断する方法が多くとられています。


不貞行為とは、妻(もしくは夫)以外の相手と自らの意思で性的関係を結ぶことをいいます。

不貞行為は、裁判離婚の離婚原因の一つとなっているため、配偶者が不貞行為を行った場合、こちらは離婚を請求することができます。
逆に、不貞行為を行った相手(有責配偶者)からの離婚請求は、原則的に認められていません。
しかし、不貞行為を行う前に、夫婦関係が破綻していた場合は、この限りではありません。不貞関係を行う前に、夫婦関係が破綻していたということが裁判所に認められた場合、離婚することは可能です。


民法770条1項は、裁判上で次の5つを離婚原因として認めています。

1)不貞行為
2)悪意の遺棄
3)3年以上の生死不明
4)強度の精神病
5)婚姻を継続しがたい重大な事由


 妻の側から、法律問題としてではなく人生相談として尋ねられることがある。
 基本的には、「自分の人生の問題だから、自分で決めるものだと思いますよ。」と答える。
 しかし、考えるきっかけは、必要だと思うので、1つの考え方として日頃考えるところを示そうと思う。

 第1の基準
  夫が暴力を振るったり、生活費を渡さないなど、生活の維持そのものが困難なのかどうか。
  人の性癖には、なかなか改まらないものも多いと感ずるが、とりわけ、生活の基本に関すること
 は注意するべきだと思う。
  逆に夫の女性問題の場合、そのことが生活の基本にまで影響しているのかどうかは考えてみ
 ても良いと思う。
 
 第2の基準
  離婚して、自分一人で生活していく覚悟があるのかどうか。
  家庭を壊したのが、夫の側なのだから、自分の今後の生活の面倒は全部見てもらえて当然と
 考えると、実際はその通りにはならないことも多いと思う。

  (1)この2つの基準に、2つとも「その通り」ならば、離婚を考えるべきだと思う。
  (2)第1の基準は、「その通り」、第2の基準は、「そうでない。」ならば、当分の間、
    別居するなどの道を考える必要があると思う。
  (3)第1の基準は、「そうでない」、第2の基準を「その通り」ならば、何が我慢でき
    ないのかを良く考えて、その解消のために方法を選ぶべきだと思う。じっくり取り組
    んでよいケースだと思う。
  (4)2つの基準とも「そうでない」ならば、自分は何を希望し、そのうち何を優先する
   べきなのかを良く考えるべきだと思う。