(1)・「認知症や障害のために、不利益な契約であっても判断ができずに契約を結んでしまいそう」


・「財産の適切な管理ができない」


・「介護施設などに入所したほうが良いのだけれど、判断ができず、契約が結べない」


・「今は、大丈夫だけれど、将来、判断ができなくなったときのために、今から準備しておきたい」
 こういった判断能力が不十分な方や将来、判断能力が不十分になったときに向けて準備しておきたい方のために、成年後見制度という制度があります。



(2) 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。 法定後見制度は、裁判所の手続きで後見人などを選任してもらう制度で、任意後見制度は、後見人を選任したい人と後見人になる人との契約によって、後見人を選任する制度です。 法定後見制度は、既に判断能力が不十分になっていて、自分で選任することが難しい方に向き、任意後見制度は、まだ判断能力が不十分にはなっておられず、自分で後見人を選任できる方に向くといえるでしょう。




 まず家庭裁判所に必要書類を添付して申立をします。この段階で、親族の状況や意向を記す必要があります。
 後見及び保佐申立では、医師による鑑定が必要です。かかりつけの医師があればその医師に依頼するなど、あらかじめ鑑定をしてくれる医師を決めておいた方が、手続は迅速となります。
 申立後、審判で決められるまでの間に、調査官による調査があります。本人や後見人候補者と面会して、本人の状態や意思確認を行います。
 また、推定相続人の意向調査が行われます。推定相続人の間で意思の違いがあるかなど、事情を把握し、適切な後見人を選任するためのものです。
 スムーズに進むならば、2ヶ月程度で審判が出されます。


 成年後見(法定後見、任意後見)は、精神上の障害により判断能力が欠けていたり不十分になったときに利用されるものです。したがって、身体の自由がきかないという場合には利用できません。
 この場合、自分の信頼できる人と私的な委任契約を締結して、財産管理を依頼することになります。
 依頼する内容は、財産管理だけでなく、身上監護も対象とすることもできます。
 誰を財産管理人として依頼するかは、重要な点です。自分が入所している施設やその責任者に委任するということも考えられますが、施設の利用契約においては、サービスを受ける側とそれを提供する側とでは利益相反の関係がありますから、避けるべきだと考えられます。


 任意の財産管理契約を締結しても良いのか、それとも法定後見を利用した方が良いのかを決めるためには、本人の判断能力を判定する必要があります。
 しかし、判断能力を簡単に判定する方法があるのではありません。
 医師等の専門家が利用する判定基準はありますが、専門家でない人が利用できるものとして、社会福祉協議会が作成している契約締結判定ガイドラインがあります。
 このガイドラインでは、まず、ごく基礎的なことが理解でき、そのことを伝えられるかどうかを確かめます。次に自分の現状が分かっているかどうかを確かめます。そして、具体的に契約内容についての理解を確かめます。調査の具体的な項目は、ここでは記しませんが、その総合評価により決めます。